障子とデザインで楽しむこだわりの空間作り。おすすめのテイストや事例を紹介
「障子」と聞いて、みなさまはどのようなイメージを思い浮かべるでしょうか。
旅館のような趣のある和風建築であったり、幼いころに訪れた祖父母の家であったり。中には昔話の一幕のように、障子を通してほんのりと影が浮かぶワンシーンを思い浮かべる方も多いでしょう。
日本の暮らしで長年使われてきた「障子」は、わたしたちにとって身近な存在です。
しかし「和風」という印象の強さからか、障子の持つデザイン性の高さや、障子を使った洋室に合うインテリアテイストついては、あまり知られていません。
今回はデザイン性の高い障子の魅力について、詳しく解説します。障子を使った人気のインテリアテイストや実際の施工事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
障子とは
障子は主に杉や桧(ひのき)などの木材で作った木枠に、和紙を貼りつけて作ったもので、日本固有の建具として親しまれてきました。
「障子」という言葉は、平安時代中期に書かれた『源氏物語』にも登場しますが、現在の障子の原型は、平安時代末期に登場した「明障子(あかりしょうじ)」だと考えられています。(※)
室町時代には、障子や襖で部屋を仕切り、床に畳を敷き詰める「書院造」の建物が普及し、現在の和室が形作られました。
※参考 | 風俗博物館「貴族の生活 彩る調度の品々」
障子の主な種類
木枠と和紙をベースにした障子は、シンプルな造りでアレンジしやすく、使い勝手に合わせて豊富な種類が登場しました。
- 水腰障子
- 腰板障子
- 額入り障子
- 猫間障子
主な障子の種類について、それぞれの特徴を解説します。
水腰障子
水腰障子は、木枠の一面すべてに障子紙を貼りつけたもの。最もスタンダードなデザインといえる障子です。
腰板障子
腰板障子とは、障子の下部に「腰板」と呼ばれる板を貼りつけた障子のこと。シンプルな腰板だけでなく、彩画を施したものや天然木の風合いを活かしたものなど、アレンジも豊富です。
腰板の高さは70cmまでが一般的で、これよりも高さのある板を使ったものは「腰高障子」として区別されます。
額入り障子
額入り障子は昭和初期に流行した障子で、中央にガラス製の額をはめ込んだ障子です。障子を閉めたままでも外の景色が楽しめると、当時人気がありました。
中央にガラスをはめ込んだ「額入り障子」に対し、障子の下側、腰板に当たる部分にガラスがはめ込まれたものは「雪見障子」と呼ばれています。
猫間障子
猫間障子とは、障子の下部に上下や左右にスライドして開けられる、小さな引き戸を取りつけた障子です。障子を閉めたままでも猫が出入りできるようにと考えられたことが、名前の由来といわれています。
障子の魅力
遮断せずに、空間をさりげなく仕切る障子の奥深さは、日本の伝統的な生活様式の中で長年親しまれてきました。
近年、他の建具にはない「やわらかく空間を仕切る」障子の魅力が、インテリア業界でも注目を集めています。障子の持つ、3つの魅力を見ていきましょう。
デザイン性が高い
1つめの魅力は、デザイン性の高さです。先ほど紹介した「水腰障子」や「腰板障子」、「額入り障子」や「猫間障子」といった種類だけでなく、木枠の組み方や障子紙の組み合わせによって、障子は何通りものデザインが楽しめます。
シンプルな造りだからこそ、素材へのこだわりやデザインへの遊び心を取り入れやすいのが、障子の魅力です。
やわらかく空間を仕切れる
小説家の谷崎潤一郎氏は、著書「陰翳礼賛」で日本の伝統的な和室を墨絵に例え、『障子は墨色の最も淡い部分』と記しました。
障子の魅力は、障子紙の質感を通して室内に光を届け、空間を遮ることなくやわらかく仕切ること。閉じた障子紙に映る庭木の影など、外との繋がりをも感じさせる奥深さは、障子ならではの魅力です。
和のテイストを楽しめる
日本固有の建具である障子は、インテリアに取り入れるだけで和のテイストを高めてくれます。
最近は異なるインテリアテイストを合わせた、ミックステイストが人気です。モダンテイストに障子を組み合わせれば、洗練された和モダンのインテリアスタイルが楽しめるでしょう。
デザイン性の高い障子が映えるインテリアテイスト
デザイン性に優れた障子は、近年注目されるインテリアのミックススタイルでも人気です。
障子が映えるインテリアテイストの中から、特に人気の「ジャパンディ」と「和モダン」を紹介します。
ジャパンディ
「ジャパンディ(Japamdi)」とは、「和の要素(Japanese)」と「北欧の要素(Scandinavian)」を組み合わせた、今注目のインテリアスタイルです。
ナチュラルな色合いとぬくもりのある木製家具を組み合わせた北欧テイストと、洗練された趣のある和テイストは相性も抜群で、今後の人気ぶりが注目されています。
日本ならではの空間を演出する障子は、ジャパンディスタイルでも注目されているアイテムです。
和モダン
和モダンとは、和テイストと現代風のテイストを組み合わせた、スタイリッシュな中に落ち着きを感じさせるスタイルのこと。おしゃれでくつろげるインテリアスタイルのため、居心地の良さを大切にするホテルやカフェなどでも広く取り入れられています。
組み合わせ方が難しいといわれるモダンスタイルですが、デザインも豊富で和のテイストを楽しみやすい障子は、和モダンにも合わせやすいと好評です。
障子のデザインを生かした事例を紹介
障子をさらに身近に感じていただくために、デザインを生かした事例を紹介します。障子ならではの魅力が楽しめるデザインばかりですので、ぜひ参考にしてください。
障子のデザインで魅せるリビング
掲載事例 | DOAX シナ 片引き戸 枠セット / 特注 スプルース 飾り入り障子 3枚引き込み 枠セット
こちらは杉板のフローリングと板張りの天井が美しいリビングに、飾り入りの障子を組み合わせた事例です。障子ならではの和のテイストと、木目を基調としたインテリアが、ぬくもりと落ち着きを演出しています。
障子を引き開けると、あらわれるのは小上がりの和室スペース。昼寝をしたいときや、少しだけ1人でくつろぎたいときなど。
ゆるやかに空間を仕切る障子だからこそ、家族との繋がりを感じつつも、1人だけの特別な時間を楽しめます。
モザイク柄が映える障子
掲載事例 | 特注 モザイク障子 枠セット / 杉 ガラス戸 枠セット
こちらは、大胆に配置したモザイク柄が印象的な事例です。障子を使ってゆるやかに外と中の区切りをつけ、訪れた人にアプローチから続く縁側のような印象を抱かせています。
障子を開け放ったときの開放感もさることながら、秀逸なのが障子のモザイク柄と、畳の市松模様の美しさ。
和モダンのインテリアテイストが演出する、スタイリッシュさの中にも遊び心を感じさせる事例です。
障子とぬくもりで和らぎを感じるデザイン
掲載事例 | 特注 杉 障子 枠セット
最後に紹介するのは、モルタルの床と障子との組み合わせが、モダンな印象に仕上った事例です。大きく繰り抜いた窓から差し込む光と薪ストーブのぬくもりが、居心地のよさをさらに高めています。
お施主様の要望を取り入れ、障子は敢えて大きめに4分割。ご希望に合わせてアレンジしやすいのも、障子ならではの魅力です。
障子のデザインを楽しむなら杉野製作所にご相談ください
障子はわたしたちの感性に心地よく寄り添うものでありながら、洋室やモダンスタイルにも合わせやすい、可能性にあふれた建具です。
日本らしい意匠や伝統文化を大切にしたいと考える杉野製作所では、現在、障子製作の技術を維持しつつ、新しい製法での障子開発に注力。この度、デザインと素材にこだわった「吉吉障子(ヨシヨシショウジ)」を開発しました。
「吉吉障子」の名前は、日本の代表的な建築家、吉村順三氏デザインの「吉村障子」から拝した「吉」の字と、素材として使用する吉野杉の「吉」に由来しています。
日本の伝統的な素材である吉野杉と、現代の住宅に馴染む吉村障子をベースにした「吉吉障子」は、2024年7月にホームページでの発売開始予定です。
詳細については追ってお知らせいたしますので、告知まで少々お待ちくださいませ。